388のブログ

文章を置いておく場所

空を飛んだ話。

 
明日、私は空を飛ぶ。
何もない空に
飛びたい理由も特にない。
 
涙が出る理由を、私は知らない。
 
気持ちよくても、気持ち悪くても、ずっと笑顔で応えてくれるおかあさん。
怖くても、温かくても、ただそこにいてくれる優しい家族。
 
 
 
飛びたい。
私は、飛びたい。
 
夜中のうちに準備をした。
 
お風呂に入って、しっかり髪の毛のケアもした。
 
携帯は、ベッドに放り投げた。
ぼふっと沈んで、液晶画面がゆっくり暗くなった。
 
 
私は、生きていない。
死んでもいないし、ただ足がないだけかもしれない。
 
 
自然と空に浮かんでいった。
ゆっくり、ゆっくり上がっていった。
 
 
私の魂は、空に浮いて、ピンク色に発光した。
 
 
「私」という存在が、今亡くなった。
無くなった。
泣くなった。
なくなった。
 
 
なくなった。
 
 
綺麗な物語は、死があるの?
死があるから、綺麗なのよ。
 
おかあさん。 おやすみ。
 
 
境目は、どうしてあるの?
そんなもの、こわしてしまえばいいんだ。
 
おとうさん。おやすみ。
 
 
 
おやすみ
瞼の裏の世界に 私はいるよ

悲しみと渦



泣いて、笑って、叫んで、飛んで、生き返って、笑って、泣いて、叫んで、僕のために堕ちた。


真っ逆さまだ。


痛々しい手首に、突出した眼球、頬には流れた涙の跡があった。


もう、戻れなくて悲しい。

理解しているから、余計に悲しい。

分かっているのに、思考が止まらないから悲しい。

もう、目を潰してしまいたくなる。

何も見たくない。


でも、まだ見たことのない景色はたくさんあるし、行きたいところも見たいものもたくさんある。

そんなものたちがどうでもよくなるくらいに、悲しい。


悲しい。


もう、どうしようもない。


どうしようもない状態で、なるべく考えることを避けて生きている。


限界は無いと思う。けれど、苦しみも然り。



悲しい。


無力だ。

脳が、邪魔をする。



僕のために堕ちてくれてありがとう。


ぐるぐるループする渦の中で、無限にぐるぐる廻っていてください。


どうか、気付かないで。

もう、何も見たくない。



ただ、悲しい。


もう無理やり生きるのは、悲しい。


また、おやすみなさいと言って今日という日を無理やり終わらせる。



おやすみなさい

夏の終わりと冬のはじまり

私は 冬の はじまり で

君は 夏の おわり。





夏が大嫌い。



だって、冬は厚着さえすれば暖かいのに、夏は全裸になっても暑いのよ?




耐えられない。



ただ、外の茹だるような暑さから逃げるように喫茶店に入った時の空気の冷たさが、とても心地よいのは知っている。


日本海側の夏は、なんだか湿気ていて、執着されそうな暑さだ。


とくに、夏の終わりの方は、ずっと喉が詰まるような感覚がする。



でもね、明日からは冬がはじまるの。


私の大好きな冬。


雨雲のない寒空で、影が薄く伸び、空気は澄んでいる。


降水確率は、40%



マフラーに鼻の先まで埋めるのが好きで、冷え性の私は、手先がとても冷たくなるけど


缶コーヒーをころころ転がしながら暖まるのが気持ちいい。



夏の終わりと、冬のはじまりはリンクしていて気まぐれに交代する。



湿った空気と、澄んだ空気。



似ているようで、まるでちがう。



目を瞑りたくなるような恐怖を。

大声で搔き消してしまいたくなるような現実を。


頭の中で反響する言葉がある。



それを探し出して、捕らえて、殺害する。




永遠のループを断ち切って。





また夏の終わりがやってくる。




さつじんき

良いか、俺はいつか人をころすぞ



殺人鬼は人しかころさないんだ、素晴らしいとおもわないか



僕の父さんはいつもそう言っていた


長くて深い夜に限って 寝ている僕をわざわざ起こしてから 耳元でさらさらと流れるようにしゃべっていた



くるしいけど 僕も人を殺したかった



良いか、僕も人をころしたいんだ


人だけをころしてやるんだ、褒めてくれ



良いか  良いか



泣きながら自分も殺せるんだ


生きながら自分は死ねるんだ


言葉で人をころしてみせるぞ


暴力よりも 際限のない苦しみを



良いか  良いか



父は 僕が殺したんだ


良いか  まだ生きてると思ってるんだ 父さんは



そして僕は 僕も殺したんだ



地球はたぶん 真四角で 真っ平らだ


そして 人も 同じように ぺらぺらだ



過呼吸になり掛けながら 元気だ 大丈夫 だと言う 精神障害者たち


発達や運動に嫌われた 身体障害者たち



それを蔑む クラスの  おともだち



みんな 仲が良くて みんなぺらぺらで



そういう人を ころしたいんだ



良いか 僕は ぼくを殺せたんだ



あとは 何をしたらいいのか



父さんは教えてくれなかった





あとは 性と普遍を じゅんばんに


じっくり ころしていくのを 楽しみたいと思います。





良いか 、 ぼくは 死んでいるんだ




際限のない苦しみの中に


父さんとふたり 



くるしくて 頭がおかしくなります



発狂するのは 苦しいのは お好きですか





(ぼくが全部わるいわけじゃない)


(だれのせいだ だれのせい)




良いか



苦しみは  人を生かせるし 殺すこともできるんだ


どうだ 素晴らしいとおもわないか



ぼくを 生かしてくれるんだ



寝ても逃げられないよ



夢の中でもくるしんでね



いってらっしゃい

記憶と失明

記憶が無くなっていく病を患った。

今朝食べたもの、さっき置いたボールペン、スーパーで買わなければいけない食品、支払わなければならない公共料金、母の顔、恋人の名前。

病は深刻で、進行も早かった。

両親は僕を心配して大きめの病院に連れて行った。

入院したのが5月3日だから、それから2ヶ月くらい経っていたころ。

天使と悪魔があわられた。

天使は優しく僕に悲しそうだね、と囁いた。

悪魔ははきはきと僕にお前の病気を治してやる、と言った。

これでは天使と悪魔がどちらか分からない。

とにかく僕の病は治ることは本当らしい。

さっきから後ろで恋人が微笑んでいる。

僕は天使と悪魔たちと儀式をした。

僕は病を治す代償として、視力を失った。

何も見ずに済む世界は素晴らしい。

音が、鼓膜に突き刺さるときは、思わず吐血してしまうが。

夜なのか朝なのか分からない。

いま泣いている恋人は、どんな顔をしているのか分からない。

それでも僕は嬉しくて楽しくて幸福だった。

止まない雨。終わりのないトンネル。

光がない世界。

これが僕の望んでいた世界そのものだと思った。

ただ、僕は死にたかった。

どうしようもなく、自殺したかった。

布団から起き上がる気力すらなかった。

スマホの充電器を引っ張ってコンセントから抜いて、首をぐるぐる巻きにした。

しかし僕には力がなかった。最後まで首を絞められなかった。

悲しいのは、それだけだった。

たまに布団の上で死にたくなるのだ。

今は夜なのだ。

夜は怖い。暗くて怖い。

光が当たっていないところに住んでいた。

僕は、はやく自殺しないといけないと思いながら、布団から起き上がりカッターを探し始めた。

音がない、光もない、色もない、夜もない。

ただ、希死念慮がそこにいただけだった。

女の子と、愛と記憶の交差。

女の子が手招きしながら、僕を見て笑ってる。

 

 

僕は、そんな小心者でも無いので、その女の子のする通りにした。ついていった。

 

君は僕の何を知っているんだい?

 

私はあなたの全てを知っているわ。

 

そう。じゃあ心配ないね。

 

 

それだけの会話を投げつけて、放棄した。

 

口を開いて息を出し、声帯を震わせて、口を開くという行為をしたくなかった。

 

それに、彼女は僕の全てを知っているのだから、話さなくても、分かってくれるだろう。

 

 

彼女の目先に、死体が落ちていた。

 

僕は、特に驚かなかった。

 

なぜなら、それは昨日死んだ飼い犬だったから。

 

 

昨日何度も何度も繰り返して見た、ただの肉の塊に特に情は湧かなかった。

 

ただ、あまりにも彼女が驚いて、眼球が落ちそうなほど目を見開いているのが、怖かった。

 

 

僕は、彼女を抱きしめた。

 

何も見えなくなるように、僕しか見えないように、そんなもので悲しまなくてもいいように、君だけが悪いんじゃ無くて、世界の全てに腹が立ったから、抱きしめたら、世界のせいにできるような気がしたから。

 

彼女は僕に言った。

 

 

私は、何でも知っているのよ。

あなたのことも、世界のことも、神になる方法さえ知っているわ。

 

それでも、まだここにいるの。

それは、なぜだと思う?

 

 

彼女にしては、難しい事を言い出すな、と思った。

 

 

けれど、僕は茶化さずに真剣に答えたフリをした。

あくまでも、フリだ。

 

 

愛に縋っている。過去の愛に。

君は、愛の依存をしている。

僕が昔あげたことのある、何かの愛。

 

 

そう答えたけれど、いつこんな女の子に愛をあげるようなことをしただろう、と思っていた。

僕、ロリコンじゃないし。

 

 

彼女をよく見ると、あれの名残があった。

 

 

ああ、そういうことか。

 

僕はなんとなく分かった。理解した。

 

 

 

 

君は、あの時の黒猫かい?

 

 

そうよ。あなたにやけに懐いてやったの。

あのへんてこりんな陶器に入れられていた、黒い猫よ。

 

 

私は、何でも知っているのに、自分のことは分からなかったの。

知らなかったし、知ろうともしなかったわ。

 

 

だから、まだここにいたの。

 

 

 

彼女は、いや、あの黒猫は、雌猫だったのか。

 

それだけが驚きだった。

 

 

彼女は少し自身を黒く染めて、目のふちに水を浮かべ、ゆっくり泣いた。

 

 

 

悲しいのか、嬉しいのか、悔しいのか、怖いのか、

 

 

それは僕にも、彼女にも分からないだろうし、分かりたくもない。

 

 

 

これは、僕と、黒猫のお話。

 

 

 

それから僕は、犬派です。